この夢から覚めたくないな、そんなことを思っていたら彼が
「何か悩んでることでもあるの?」
そう聞いて来ました。
「う、うん。悩んでいるというより、以前イヤなことがあって、そのことがずっと心の中にあるという感じなんだけど」
いきなり聞いて来たから、本当のことを言っちゃった!
「そうだったんだね」
彼は私のこと、本当はお見通しのようだけど、わざわざ聞いてきたような、そんな気がした。
「でも、もう終わったことだから、なるべく考えないようにしているんだけど、そのことで本当の自分じゃない自分になっているような気がしているの」
やだ!なんでこんなこと言っちゃったのかな。
よくわからないけど、思ってもいないことを話しちゃった!
「本当の自分じゃない自分」
確かに、本当はもっと楽しいことが大好きだし、もっと笑ってると思うし、もっと明るい私かもしれない。
そんなこと、考えたこともなかった。
彼にもっと色々話したい!聞いてもらいたい!
そう思っていたら、入り口のドアが開いてガヤガヤと3人の中年のおじさんが入って来た。
あぁ、もうなんでこんな時に入って来るの?
せっかくこれからだったのに!
私はがっくり来て、一人で”自分”のことについて考え始めた。
私のこと
わたしの過去のイヤなこと。
それは、付き合っていた人から酷い暴力を受けていたこと。
どうしてそんな人と付き合うことになったのか、特に考えたこともなかったけど、
最初は彼がすごく優しくて、そのことが嬉しくて嬉しくてどんどん彼に惹かれていったけど、
そのうち優しくしてもらいたくて、彼のわがままを聞く、彼にとっての都合の良い女になっていたのです。
遡れば、私の母も怒れば手が出る人で、母に怒られないように怒られないようにと一生懸命良い子を演じていました。
だから、少しでも優しくしてくれる人が現われると嬉しくて着いていってしまう私になっていたのかもしれません。
まるで子猫のように。
そのことがあってから、食事が喉を通らないほど心も身体も酷く傷つき、人が振り返るほどやせ細ってしまいました。
そういえば、仕事帰りに街頭でティッシュを配っているお兄さんに
「何怒ってるの?怖い顔してるで!」そんなことを言われたことがあったな。
本当の私って、明るくていつも笑っている私なのかもしれない。
そうよ!そうに決まってる!
私って本当は明るくていつも笑ってる私なんだ!!
お酒も入っているせいか、急に私は立ち上がって、彼にこう言ったのでした。
「私は、本当はキラキラ輝いているんです!」
後から入って来た3人組のおじさんが一斉に私の方を見たのが分りました。
「ははは!十分輝いてるで~」
3人組の一人がそう言いました。
彼はというと、やっぱり優しい眼差しで、私を包み込むように微笑んでいました。
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